2013年2月1日金曜日

大学院選定する優先順位・・・・ ロマンとそろばん


年末年始にかけて、5000ワードのエッセイを2本書きあげた。年末は風邪で数日ダウンしたので、元旦も血眼になって作業を進めた。モジュール評価の全て、100%の可否がこれらにかかっているのでこちらも必死だ。丁度、去年の年末年始は、大学院選定に明け暮れていたので、毎年、元旦はせわしいスタートになっている。

今回は、イギリスで大学院を選定する優先順位について考える。一言で言えば、「ロマンとそろばん」のバランスが重要ということに尽きる。筆者は日本国内の大学の経済学部卒業、企業では経理のマネージャを経験して、歴史の大学院に通っている。よって、後進の方々すべてに当てはまる訳ではない事を最初にお断りしておく。

入る前から、出口を想定しておくことが重要である。就社・就職に直結しているのであればなおさらのこと(筆者は、当面は直結しない可能性もあるがゆえに、MBAや法律系等、実務直結型の進路後のキャリアパスとの関係は断言できない。他情報源を確認してほしい)。

ここでは、卒業という狭義の出口を見据えて考えたい。

筆者は大学院の選定は「自分の関心事、教授陣、卒業できる可能性、自分の語学力、立地」という優先順位で行った。

コース(専攻)・モジュール(ゼミ・レクチャー等)によってクリアすべき評価基準が違うので「大学院」あるいは「修士」卒をひとくくりに出来ないから、候補となるコースを幾つかピックアップし、自分なりに入学条件や関心ある事項をマトリックス(表)にして、優先順位を考えていくべきであろう。

選定における意味合いを次に述べる。

最優先事項としては、自分がどれだけ関心事にのめりこめるか、という事につきる。英語力を含む劣後要件をカバーしようという戦術だ。例えソーシャルな会話が稚拙であっても専門分野での知識と語彙は増やしていく等の割切りが必要。 フルタイムの場合は、1年しかないので、関心の無い分野も取らざるをえないようなコースは避け、卒業の可能性を高めておくのが肝要だと思う。歴史で言えば、中世・古代史に興味が無いならば「歴史学」といった広いテーマのコースは避け「近現代史」のコースを選ぶといった事だろう。

次に重要なのは教授陣であるが、教授自体が異動したり休学することもあるから、複数の教授を考えておく必要がある。志望動機書(Personal statement)で「この教授のXXのモジュールを取りたい」とアピールして合格率を上げる意味でも、「自分の関心事+教授」の情報収集は重要だろう。

第三に、卒業要件は、各種各様なので複数の学校で迷った場合には、この差のチェックも必要だ。私の属するコースは、各モジュールとも100%論文が評価対象。毎週のゼミにおけるプレゼンは任意だが、90%の生徒が何らかの形で発表することになる。が、直接の評価対象にはなっていない。結果的に論文一発勝負、ということになる。評価の対象にならない試験やエッセイを課されるコースもあると聞いている。
 一般に、国際商法、ビジネス系の科目は、試験+エッセイ+プレゼン、そして卒論という構成になっているようであり、地域研究のコースの場合は、関係する専門分野モジュール+現地語学モジュールという組み合わせケースが多い。英語スキルが厳しい上に新言語、というのは現実的でないと判断し、こういったコースは回避した。必要であれば、大学院生向けの語学コース等をオプション(追加料金)で受けることにすれば、卒業要件にならず、自分のペースで学べるだろう。

語学力については、IELTS(TOFEL)次第だが、公式HPに載っている足切り条件以下であってもチャンスはある。筆者について言えば、条件付きオファーにおけるIETLSスコアは、公式HP以下のスコアが提示されて来た。英国ビザの体系では高等教育を受ける資格を所与する下限スコアを提示しているだけで、後は各学校が独自で判断し、必要な英語力を持っているかどうかの他に、他の要件(志望動機書・推薦状・大学の成績)を勘案して条件付きオファーを提示している模様だ。筆者はスカイプでの面接もあったので、出来る限り自分をアピールした点も評価されたのかもしれない。 日本で喧伝されている「ランク」上位校からのオファーが出ても、「ランク」下位校とされているところからオファーがもらえない、というケースが複数あった。
 
    正直なところ、IELTS6.5であろう7.0であろうが、あくまでも入国審査の入り口に過ぎず大学院の授業や討論(特にネイティブ主体)であると相当に厳しいのが実感。入学決定後もガンガン英語をブラッシュアップすべきだと考える。
 

最後に立地だが、歴史を研究する大学院生にとって重要なのは、一次資料や二次資料に気軽にアクセスできる環境と考える。大英図書館や国立公文書館(ナショナルアーカイブス)のオンラインカタログは充実しているが、現物はやはり現地に行く必要があるからだ。図書館については、オンラインの各種ジャーナルへのアクセスは当然として、各カレッジの図書館だけでなくSeneta-houseと呼ばれるロンドン大学共通の図書館も、専攻によっては無償で使用できるから、全ての書籍を買い入れる必要はないだろう。加えて、ロンドンでは、常に各分野のイベントが何かしら開かれており、カレッジを超えて気軽に参加できる、ということにある。

     

   なお、「留学フェア」と称するイベントが盛んだが、ここに来る大学の代表者は、セールスパーソンなので注意が必要だ。「ヨーロッパの現代史」を大学院で学べるかと問うても、「歴史のコースは有るわよ」といって学部のカタログを渡してくるような大学もあるから、要注意だ。カタログは豪華に作られ、ゴルフ場やリゾート地広告と見まがうような豪華な写真を載せているケースも多々ある。3年間毎日過ごす、学部生ならいざ知らず、院生にとっては、知のインフラがどの程度整っているかがこそが最重要であるから、外観だけに惑わされてはいけない。イギリスの大学はほぼ国営とはいえ、完全に独立採算制。専門のセールス部隊を持ち、各国で青田買い活動を展開している。企業と一緒で、優秀な人材を確保・実績をあげれば大学の名声があがり、財政基盤が安定・投資という好循環を現出できるからだ。

 

       筆者は11月から学校選定を始め、2月に願書提出、3月に複数校からの条件付き入学許可が出てきた。最終的に6月のILETSの結果で今の学校に決めたが、もう少し早いうちから始め、イギリスでプレセッショナルを受けられるようにしておくのがよいと考える。EU圏の学生達はもう少しお気楽なようで、期限ぎりぎりに申し込んできているものもいたようだ。

  いずれにせよ、ロマン(やりたい・やるべき)とそろばん(やれそう)のバランスを考え、後進の諸兄諸姉が成就する事を祈願します。

               
 
  街で見かけた「Great Food」なるパブのコマーシャル。「Great」だの「Special」と書いてあれば、平均、あるいはそれ以下のものが供されるのがイギリス流。物価が毎年上がる分だけ、賛辞する言葉も、インフレ気味である。 この手の看板が出ていないパブをお薦めする。本当に旨い店は洋の東西を問わず、べたべたと広告など打たないのが世の常である。パブも大学もセールストークには要注意。

(2013/2/1記)
               
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