2013年1月11日金曜日

イギリスにおける博物館・趣味関係のソサエティを考える


現地で学校関係以外の人たちと気楽に接点を持つ方法がないかと考えたのが、日本の「何か」を探求している組織に参加する事であった。

イギリスには様々なソサイアティや博物館があり、それぞれが緩やかな連携を取りながら多様な趣味の時間を過ごしているようだ。美術館や一般の博物館(こちらは項を改め考えたい)以外で、今までに訪問して印象残ったのは下記のような専門博物館だ。
ドイツや日本の暗号解読を行っていた場所をそのまま博物館にしたBletchley Park(http://www.bletchleypark.org/)
ドイツが開発した暗号通信用の「エニグマ」
オックスフォードで走っていたバスや製造中止になったMorris carsのコレクションを集めたバス博物館(http://www.oxfordbusmuseum.org.uk/)

バトルオブブリテンで使用した飛行場を博物館に改装したダックスフォード帝国戦争博物館(http://www.iwm.org.uk/visits/iwm-duxford)・・・
ダックスフォードにある飛行可能なB-17爆撃機

ただ展示するのではなく当時のもので今も作動するものを残し、充実させ続けている共通点がある。それらを支えるのは税額控除が可能な寄付であったりボランティアである。

特に印象に残ったのは、バス博物館のボランティアの人たちであった。昔の2階建てバス(いわゆるロンドンバス)で博物館から一般道を走って回るイベント(月一度)では、訪問者だけでなく運転手や車掌も楽しんでいた。バス会社のOBなのかは判らないが、昔風の切符を乗客に渡したり、風景を説明してくれたり・・・特に子供たちに優しく接していたのを見て素晴らしいと感じた。どこか牧歌的なオックスフォードの郊外をバスはトコトコ走っていく中でボランティアの在り方を考えていた。楽しめるから長続きするのであろうと。
保存車両でオックスフォードの郊外を走る

彼らにとって、博物館や美術館は「ハコモノ」ではなく、人々が集い、活動する中心なのだ。建物自体も「建設してハイ終わり」のではなく後から拡張する事を意図して建設されていることが多い。その意味ではディズニーランドの運営方法に相似しているかもしれない。

楽しみながら維持・運営して盛り上げて後世に何かを伝えていくことに意味がある。

 博物館運営に携わるといった本格的な事でなくても、単純に何かを探求している人たちに出会うのは楽しい。
筆者は旅、特に鉄道旅が好きなので、最初、イギリスでドイツの旅や鉄道を趣味として活動している人たちとネット上でコンタクトを取ることにした。その過程でイギリスにある「日本鉄道友の会」が、「12月の総会に参加しないか」と声をかけてくれた(http://www.japaneserailwaysociety.com/)

普段は季報の発行やミーティング、イギリス各地区での鉄道模型運転会を実施しているらしい。日本にも支部があり、メンバーが日本に来たときに乗車企画や博物館訪問等のオフ会を実施している。
Wikipediaによれば「ヨークイギリス国立鉄道博物館(http://www.nrm.org.uk/)新幹線0系電車が展示されるに当たっては、イギリス以外の鉄道車両を展示する必要はないという反対論を押さえて、この会の関係者が展示の実現に貢献している」とのことだ。
鉄道発祥の国で日本の技術が歴史的に評価されること自体に意義があるが、こうした保存活動が日本のロビー活動でなく現地からの盛り上がりに起因していたとすれば日本にとっては有難いことではないだろうか?

驚いたのは、鉄道模型のための集会所がKings Cross駅の傍にあった事だ。鉄道模型のクラブが別にあるらしく、鉄道模型用のレイアウト(走らせる台)も持っていた。そのクラブの創立者の名前が建物に付いていた。鉄道関係のイベント主体で使用されているようだが、管理人らしき人がビールやコーヒーを売ってくれる。
筆者は正直言って鉄道模型には詳しくないが、この地価の高いロンドンでこういった活動が出来る事に感心した。

もっと驚いたことに、鉄道友の会の皆さんは、日本や日本の鉄道の事を良く知っていた。黒部峡谷に走るトロッコ列車のビデオを見ていたり、昔の鉄道雑誌を持ち込んで情報交換などもしている。会員の中には奥様が日本人だったり、日本での居住経験を持つ人もおり、東京はおろか地方都市に精通していたりして此方が驚いた。筆者が知らない事実も多々あり「灯台元暗し」という感じだ。

いずれにせよ実生活と趣味を上手くバランスさせながら生活している英国の人々を垣間見る貴重な経験であった。

なお日本の名誉のために申し添えるが、最近、横浜に世界最大級の日本人のコレクションを展示する私立博物館が開館した(http://www.hara-mrm.com/index.html)とのこと。海外からの訪問客が一人でも増えることを願ってやまない。
旅や鉄道でも無くても、ダンスでも音楽系、サッカー等々、おびただしい量のソサイアティがあると思われるので、そういった接点があると、同年代や同学以外の社会を覗く良いきっかけになると思う。

真面目に道楽を追求すれば、何かが生まれるかもしれない・・・等と不遜な事を考えた年末年始であった。
(2013/1/11記)

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