今季のゼミは、ヒトラーの政権奪取期についてのトピックだ。 スターリン、ヒトラーと、イギリス人は「独裁者たち」の研究に余念がない。 クラスの4割を占める女性がゼミをリードしている感がある。 ドイツより中立的に研究できるからなのか、ドイツ系の名前を持つ教授がこのゼミの担当だ。 その中で注目した事実は、「ミュンヘン北西にあるダッハウ(Dachau)に強制収容所が出来たのは1933年である」ということだ。
昔、訪問したアウシュビッツと同様に第二次大戦では多くの強制収容所が有ったのは知っていたが、「ナチスの政権奪取と同じタイミングで収容所が出来て政治犯を拘留しはじめた」事実を知ってショックを受けた。
そこで蓄積したノウハウを各地に横展開しており、ドイツが実践的な事象に対する体系化において他の大陸の諸民族を圧倒している事実を図らずも証明していると実感。
ダッハウにはのちにバイエルン王家も収容されたが、ヒトラーあるいは国家社会主義者たちは伝統的な王家や貴族に対して不信感ないし嫉妬を感じていたのだろう。その点においてナチスドイツとソビエトの類似性を指摘することが出来る。どちらも暴力革命・既存の体制打破を肯定していたのだ。
ナチスの行った暴力行為の大部分について詳細な記録を彼らは残している。彼らは「法にのっとり」行動したのだから、記録に残すのは当然という対応だ。 実行者にとっては「法」に基づいた行動であり、体制が長く続く事を前提においた何よりの証拠である。
戦後立法を過去に遡及して適用はできず、時効が成立していれば罪には問われない。が、戦争の記憶を保存するといった、過去の事実を記録・記憶させ続ける努力は凄まじいものがある。
記録を詳細に行う伝統は東ドイツに受け継がれた。 シュタージ(Stasi 秘密警察)による相互監視の結果は事細かに記録されていた。 これも体制が永遠に続くことを前提とした行政対応の結果である。
ベルリンの壁崩壊時に失われそうになったものもあるようだが復元・現在でもシュタージ・アーカイブスにて集中保管されており閲覧できる事が法制化されている。 シュタージについて興味深い映画は「善き人のためのソナタ」がお薦め。
アーカイブスでは知りたければ、肉親・親戚・友人の誰が自分を監視していた事実を知ることが出来る訳だ。 精神的ショックを受けることを覚悟しても自分の記録を見に行く人が後を絶たない。 「過去はどうであったのかどうしても知りたい」という心理が共通しており現在でもひと月当たり1万人が閲覧するという。 ナチスの犯罪やシュタージの問題等、ドイツの過去への対峙は終わらない。
さて、そのナチスドイツと戦った日系人部隊の事を御存じであろうか?
往年のNHK大河ドラマ「山河燃ゆ」(※)のなかで堤大二郎演ずる青年が収容所の中から出征し、激しい戦闘の末聴覚を失って復員してきたのが日系二世で編成された「第442連隊戦闘団」という部隊だ。
ハワイ選出の故ダニエル・イノウエ上院議員もこの部隊の生き残りだった。 米軍の中で最も損害を出し勇猛果敢に戦った部隊である。 イタリアのモンテ・カッシーノでの戦い、ボージュの森でのテキサス大隊救出のエピソード等は知っていた。「442連隊戦闘団―進め!日系二世部隊」が詳しい(アマゾンで調べたらとんでもない値段がついていた)。
だがこのダッハウ強制収容所の解放に携わったことまでは知らなかった。ダッハウと杉原千畝氏、日系人部隊にであったユダヤ人もいたので、日本とユダヤは思わぬ所でリンクしているということだ。
山河燃ゆ(映像):https://www.youtube.com/playlist?list=PL4B3FFB28F09A4794
昔、訪問したアウシュビッツと同様に第二次大戦では多くの強制収容所が有ったのは知っていたが、「ナチスの政権奪取と同じタイミングで収容所が出来て政治犯を拘留しはじめた」事実を知ってショックを受けた。
そこで蓄積したノウハウを各地に横展開しており、ドイツが実践的な事象に対する体系化において他の大陸の諸民族を圧倒している事実を図らずも証明していると実感。
ダッハウにはのちにバイエルン王家も収容されたが、ヒトラーあるいは国家社会主義者たちは伝統的な王家や貴族に対して不信感ないし嫉妬を感じていたのだろう。その点においてナチスドイツとソビエトの類似性を指摘することが出来る。どちらも暴力革命・既存の体制打破を肯定していたのだ。
ナチスの行った暴力行為の大部分について詳細な記録を彼らは残している。彼らは「法にのっとり」行動したのだから、記録に残すのは当然という対応だ。 実行者にとっては「法」に基づいた行動であり、体制が長く続く事を前提においた何よりの証拠である。
戦後立法を過去に遡及して適用はできず、時効が成立していれば罪には問われない。が、戦争の記憶を保存するといった、過去の事実を記録・記憶させ続ける努力は凄まじいものがある。
記録を詳細に行う伝統は東ドイツに受け継がれた。 シュタージ(Stasi 秘密警察)による相互監視の結果は事細かに記録されていた。 これも体制が永遠に続くことを前提とした行政対応の結果である。
ベルリンに有る旧シュタージ本部(現博物館)
ベルリンの壁崩壊時に失われそうになったものもあるようだが復元・現在でもシュタージ・アーカイブスにて集中保管されており閲覧できる事が法制化されている。 シュタージについて興味深い映画は「善き人のためのソナタ」がお薦め。
アーカイブスでは知りたければ、肉親・親戚・友人の誰が自分を監視していた事実を知ることが出来る訳だ。 精神的ショックを受けることを覚悟しても自分の記録を見に行く人が後を絶たない。 「過去はどうであったのかどうしても知りたい」という心理が共通しており現在でもひと月当たり1万人が閲覧するという。 ナチスの犯罪やシュタージの問題等、ドイツの過去への対峙は終わらない。
ベルリン総統地下壕跡付近の案内図
(遺構は聖地にならぬよう埋められた。偶然、ヒトラー自決の日に当地を訪問したが至って平穏であった)
さて、そのナチスドイツと戦った日系人部隊の事を御存じであろうか?
往年のNHK大河ドラマ「山河燃ゆ」(※)のなかで堤大二郎演ずる青年が収容所の中から出征し、激しい戦闘の末聴覚を失って復員してきたのが日系二世で編成された「第442連隊戦闘団」という部隊だ。
ハワイ選出の故ダニエル・イノウエ上院議員もこの部隊の生き残りだった。 米軍の中で最も損害を出し勇猛果敢に戦った部隊である。 イタリアのモンテ・カッシーノでの戦い、ボージュの森でのテキサス大隊救出のエピソード等は知っていた。「442連隊戦闘団―進め!日系二世部隊」が詳しい(アマゾンで調べたらとんでもない値段がついていた)。
だがこのダッハウ強制収容所の解放に携わったことまでは知らなかった。ダッハウと杉原千畝氏、日系人部隊にであったユダヤ人もいたので、日本とユダヤは思わぬ所でリンクしているということだ。
山河燃ゆ(映像):https://www.youtube.com/playlist?list=PL4B3FFB28F09A4794
442部隊について(英語):http://www.the442.org/
極力複数のソースに当たり、客観性を担保しつつながら、戦中・戦後秘史については折に触れて調べていきたい。日本の場合は、義務教育はおろか、高等教育でもこの領域はないがしろにされているからだ。 この領域の知識取得や自らの考えまとめる事をおろそかにしていると他国(他者)に一方的に敗北する可能性がある。 それぞれ個人の国家観は違えども、認識はしておく必要は有るだろう。 どの国家に依拠するものであれ、自国・他国双方の尊重無しにはビジネスも交流も長期的には成立しえないだろう。
※「山河燃ゆ」は山崎豊子「二つの祖国」が原作の昭和59年(1984年)の大河ドラマ。三船敏郎、松本幸四郎、西田敏行、沢田研二、柴田恭平、渡辺謙、大原麗子、島田陽子、多岐川裕美、柏原よしえ等々の当代の人気(或いは後に大成する)、俳優・女優を総動員した感のある重厚な作品だった。 戦争に巻き込まれ敵味方になる兄弟をはじめ、戦争に翻弄される家族、友情、世代間の葛藤等を描いた。 所謂「重い」テーマを扱っていたにもかかわらず、視聴率は21%あった。
「お気に召したら」クリックお願いします
にほんブログ村 イギリス情報
極力複数のソースに当たり、客観性を担保しつつながら、戦中・戦後秘史については折に触れて調べていきたい。日本の場合は、義務教育はおろか、高等教育でもこの領域はないがしろにされているからだ。 この領域の知識取得や自らの考えまとめる事をおろそかにしていると他国(他者)に一方的に敗北する可能性がある。 それぞれ個人の国家観は違えども、認識はしておく必要は有るだろう。 どの国家に依拠するものであれ、自国・他国双方の尊重無しにはビジネスも交流も長期的には成立しえないだろう。
ロンドンのマーブルアーチにある「戦争動物慰霊碑」:イギリスのどこの街に行っても、戦争犠牲者の慰霊碑は街の中心地や一等地におかれている。 ここでは、馬も英雄とされており、献花が絶えない(XX号と名前があるものも居た)。 先般、ファーストフード店での馬肉混入スキャンダルで大騒ぎになったが、イギリスやアイルランドでは馬肉を食すのは一種のタブーであるらしい。
「英雄」の同輩を食す、という訳にはいかないのであろう。 馬がダメなら、鹿や牛、果ては鯨はどうなのか? 馬鹿な事言っちゃまずいか・・・(笑)
(2013/03/13記)
※「山河燃ゆ」は山崎豊子「二つの祖国」が原作の昭和59年(1984年)の大河ドラマ。三船敏郎、松本幸四郎、西田敏行、沢田研二、柴田恭平、渡辺謙、大原麗子、島田陽子、多岐川裕美、柏原よしえ等々の当代の人気(或いは後に大成する)、俳優・女優を総動員した感のある重厚な作品だった。 戦争に巻き込まれ敵味方になる兄弟をはじめ、戦争に翻弄される家族、友情、世代間の葛藤等を描いた。 所謂「重い」テーマを扱っていたにもかかわらず、視聴率は21%あった。
3 件のコメント:
「山河燃ゆ」懐かしいかも・・・って筆者の方の実年齢が凄く気になるんですが・・・・
「山河燃ゆ」はとても印象に残っています。 気になる年齢の方ですが、筆者自身も、自分の年齢に確信が持てません(笑) ま、良くも悪くもなのですが・・・
子供のころ知らない街を探検しに、自転車で遠征していました。探検しはじめる、家に帰るのを忘れてあちこち気になってしまい、立ち止まったら、いつの間にか、ロンドンに居た、という感じですね。
お答えになりましたでしょうか??
コメントを投稿