2013年3月26日火曜日

ボリスという名の宣伝塔 (ロンドンの自転車事情) その2



以前に書いた「Mind the gap! (ロンドンの自転車事情) 」について、新しい動きが出てきたのでフォローしたい。 

  幾つかの日本のメディア(主に産経グループ)でも報じられたようだが、ロンドン市長が「自転車専用の高速レーンや橋を建設、裏道から「静かな道」を経由して中心部の専用レーンに行けるよう、10年かけて数百kmに及ぶ道路を整備」「予算総額は91300万ポンド(約1,310億円)」という案をぶち上げた。

 安全上の問題からも、是非に実行されてほしいものだ。
 

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/130317/mcb1303171036003-n1.htm

http://cyclist.sanspo.com/56638

(「サイクリスト・サンスポ」なるHPがあるのを発見!)



 このボリス・ロンドン市長Alexander Boris de Pfeffel Johnson という名前で、「de」が入っており、高貴な血筋の様だ。一方で新聞記者だった時代もあり、メディアを味方につけるのに長けているようだ。 自転車システムの言いだしっぺでもある。
 

 ワイヤーを滑車で滑り降りるアトラクションの宣伝を買って出たり、自転車通勤したり、と市庁舎の外でも話題に事欠かない(笑)

  ボリス市長は話題づくりがとても上手だ。 市民との距離感をどのように近づけるかという観点で観察していると面白い。

 本人のHPの中に産経記事のネタを見つけた。 コメント欄もついており、一方的な賛成意見だけでなく、「誰がこの金を払うのか? 自動車ユーザーがまたこの金を負担するのか!」といった辛口のコメントも記されている事に公平感を感じる。

  この政治家は、このようにして各個人との対話のチャンネルをオープンにして、世論形成にも役立てているのだ、と納得。このHPには、googleの全文検索窓もついており実に親切だ。

 自転車好きらしい彼自身の肉声。この国ではともかくも説明・主張していかないと前に進まない。 が、いったん決まれば目に見える公共政策がそれなりの規模・スピードで実現する (公共工事は遅れることが多いが)。 

 自転車政策の件に関して言えば、日本同様に「関係機関との調整云々」も有るのだろうが、「走りながら考える」「民間のアイデア・資金活用」「縦横のコミュニケーション」という点で判りやすい進め方だ。 公共セクターだけでなく、民間企業においても参考になる部分があろう。


 さて、自治体HPに関しても興味深いポイントがあった。
 

 「自転車乗り」向けのロンドン交通局のHPを見ると、協賛各社の自転車関係グッズの割引広告まで出ている! 


 

 日本の自治体HPでは、「一部業者との癒着」という非難が怖いのか、割引宣伝までは見かけない。政策波及効果をより広範囲に広げるためにはもっと自由度があってもよさそうだ (不正には厳罰対応が必要だ)。 

 財政補強の一環か、市役所HPのスペースの一部売却といったものは見かけるが、(役所に頼まれた)地元業者の「義理立て」出稿も散見される。 


 見る側にとってメリットが感じづらいものを載せてどうするのか? 理解に苦しむ。

 財政に苦しいところほど、Web等で特色を出して差別化を図るべきだが・・・今後は地方間格差がより拡大していくだろうと、各自治体のWebサイトを見ていても予想できる(「組織内コミュニケーションの悪さ」が使い勝手の悪さにつながっている指摘には同意したい)。
 

 日本各地の自治体ごとのHP使いやすさの5段階評価なども興味深い。



 この結果から「使い勝手が悪かったり、やる気の見えないWebサイトの自治体は没落する」と大胆に言い切ってしまいたい

 いずれにせよ、自転車政策にしろHP活用にしろ、政策目標達成のために、官民関わらずあらゆる知恵の動員・「縦横のコミュニケーション」を徹底するというアングロサクソン流の手法は、戦時だけでなく平時も生かされていると実感する次第だ。 イギリスのショボいサービスには大いに異論があるが、「知恵を動員する事」「コミュニケーション」に関しては大いに参考にしたい


(英国王室御用達の食品会社)の配達トラック。

 よく見ると車からコードが出ており、車体にも電気自動車と書いてある。

「公共用充電ステーション」での充電中。電気自動車への各種優遇措置が取られており、こちらも興味深いテーマだ。
 

 会社もロンドン市ともども、宣伝になる風景だ。これもまた、ボリス市長の進める交通政策の一環。 
 

 「宣伝塔」ボリス市長の快(怪?)進撃を注視していきたい。

(2013/03/26)

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5 件のコメント:

Hogeco さんのコメント...

ロンドン市長が日本のメディアに載ることがないので興味深かったです。
前都知事やNY市長など、大都市の首長は個性的な人物が多いですね。

Erich1970(エリック藤牧) さんのコメント...

Hogecoさん、コメント有難うございます。 猪瀬副知事(当時)が2012年の夏に、前都知事の名代(?)でボリス市長に会いに行っています。 「お互いに物書きだから意気投合した」、と猪瀬氏はツイッターで流してたようですが・・果たして、「東京2020オリンピック」を応援してくれるかどうか???
http://pics.lockerz.com/s/231267749

ヤマケン さんのコメント...

ロンドンの自転車事情を過去と見比べれているひともいますね。

http://www.yama-kei.org/local_train_nakameguro/2009/08/post_68.html

匿名 さんのコメント...

Fortnum & Masonのブランドカラーを模した電気自動車がかわいいです。
電気自動車はイギリスでは一般的なんですか?

Erich1970(エリック藤牧) さんのコメント...

匿名様

 コメント有難うございます。 ロンドン市内は、車の流入制限を掛けていますが、電気自動車はその対象外ということです。ご近所への配達等に使われているようですね。